ひっそりと飼育される、アカガシラカラスバト(読売新聞)2011年11月17日
ひっそりと飼育される、アカガシラカラスバト(読売新聞)
世界中で小笠原諸島だけに40羽
この企画も10回目。これまで、動物たちの知られざる魅力や動物園での見方を紹介してきました。今回ご紹介するアカガシラカラスバトは、カラスのように黒い体で、頭から首に赤紫色(ワインレッド)に輝く模様を持つハトの仲間です。1ペアを表門から入って右手のキジ舎で展示していますが、実はほとんどの個体を裏(非公開)で飼育しています。
アカガシラカラスバトと聞いて、すぐに姿を思い浮かべられる人はほとんどいないと思います。認知度の低い鳥ですが、天然記念物・国内希少動物に指定され、世界中で小笠原諸島だけに約40羽が生息しているという“超レア”なハトです。このままでいたら近い将来に絶滅する危険性が極めて高いため、2006年に国(文部科学省、農林水産省、環境省)は「アカガシラカラスバト保護増殖事業計画」を策定し、本格的に保護増殖を始めました。これでトキやコウノトリと同じ土俵に乗ったわけです。
上野と多摩で繁殖に成功
国に先立って東京都は、2000年に保護増殖計画を作り、2001年3月にオス2羽メス1羽を捕獲して、上野動物園で繁殖を目的とした飼育を始めました。繁殖をさせるには、静かで落ち着いた場所が必要です。そこで、園内で生まれたヒナを育てる「育雛所(いくすうじょ)」で飼育することになりました。2002年11月に初めて繁殖に成功し、それからも繁殖が継続したため、2005年9月に1ペアを展示しました。上野動物園だけでは手狭になったので多摩動物公園に2ペアを移し、そこでも繁殖に成功しています。現在では、上野動物園で20羽、多摩動物公園で6羽を飼育しています。
このように、緊急に繁殖が必要な動物の場合、最近では動物園の非公開施設で繁殖を促進し、保護増殖に努めているケースがよくあります(例:ツシマヤマネコ)。
野生のアカガシラカラスバトも、小笠原の人たちによる生態の解明や野生化したネコの捕獲など懸命な保護策がとられています。現地と動物園のネットワークもできあがり、一歩一歩前進しつつあるのです。
2011年に小笠原が世界自然遺産に登録されれば、アカガシラカラスバトがその象徴として人々に広く知られるようになることは間違いないと思っています。
(上野動物園 西園飼育展示係・アカガシラカラスバトなど担当 神門 英夫)
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